気まぐれな更新4

マッドサイエンティスト風の白髪のおやじが注文したのはカットレモンの添えられた可愛らしいレモンティーだった。
おれはそれを向かいの席で目撃した。おやじの髪型については兼ねてから注目していた。それが、ここへ来て、「レモンティー」という変化球を投げてきたのである。全く、懲りない奴だ。
「レモンティー」。黄色の可愛い球体状の果実には清涼感や、彩の良さなど、様々な効用があるが、とりわけ、「可愛らしさ」これには定評がある。
女の子とデートしている最中にレモンのかぶりものがあったら、間違いなくぐいぐいと強引にでもかぶらせてみたくなるのが男の性というものだ。
そして休憩時間、「もしアタシがホントにレモンになったらどうする?」と彼女が聞いてくる。
「へ?」と僕。
「青果市場にワタシが紛れこんだら助けてくれるの?」
「はあ……」と僕。
「どうなの?できる?」
「まあね」と僕。
「なんで?」と彼女。
「君の……味を知ってるからさ……」
「いやだ~、ちょ~エッチなんだけど~」と言いながら、僕の肩をバンバン叩く……はずです。
そんな甘酸っぱい存在、レモンを堂々と注文し、ばっさばさの髪で新聞読みながら、大してグラスの方も見てない。僕がぱっと見たら、最初グラスの縁に刺さってたレモンは浮き輪のようにレモンティーに浮かんでました。こうまでレモンというものに対する印象は人によって違うんですね。