汗について

汗というのは普通洗い流されるものである。したがって、その人間との関りにおいて、汗ほど称賛、軽蔑に無頓着な生き物(?)も珍しい。「いい汗かいた」「今日は変な汗(!)かいちゃったよ」「汗も出来ちゃった」「汗くさい」「汗をかきたくないからスポーツしない」等。
どんな言われようをしても、「結局流される」という全てチャラになるんでしょ?的な開き直りの境地にあるといっていい汗。
変な汗ってのはどんな汗なのか、汗のほうが人間に聞いてみたいという「汗の道は汗」が成り立たない感じもすごい。
汗というのは実に強かものである。流される運命を確実に理解し、それを逆に利用している感じがある。
「いい汗」という半ば矛盾する表現にも顔色一つ変えずに流されている。
普通なら、「いい汗って言っておいて、なんだよ、それ? 流すのかよ!おい? 聞いてんのか、ブクブクブク……」みたいなやりとりの一つもあっていいような気がするのだが、汗ってのは実に寡黙な奴だ。
汗が生き物だったらしゃべってみたい気がする。多分、「どうせ流されると思ったら、全部馬鹿らしくなっちゃって……」とか半笑いで口にするに違いない。おれも汗のように寡黙に全てを受け止めて生きて行けたらなあ。