Hさんの落ち着きとカラオケボックスにおける安心感について

 Hさんという知り合いがいる。Hさんは現在僕と同じ就労支援センターに通い、共に社会復帰を目指して切磋琢磨する身なのだが……不思議なほど落ち着いている。

 僕は32歳という年齢のこともあり、早く就職せねば!!とかなり焦りながらせこせこと家でも自分に就けそうな就職先の情報を探し彷徨って、電脳世界をたどたどしく歩き回り、その途方もない広さに半ば呆然と時に白目を剥いたりしているのだが、Hさんからは不思議なほどそのような疲弊感や焦りが感じられない。

 そんなHさんから先日カラオケに誘われた。僕は二つ返事でOKしたが、心の中では、「Hさんやっぱり余裕あるな~」と感心していた。「やっぱりHさんはすごい……!!」そして「僕は年末の心緩む時期も、とてもじゃないが、自分一人では遊ぶ気になどなれそうにもないぞ!!」と戦々恐々としながらも、Hさんを讃えていた。

 そんなHさんとカラオケボックスへ。そこでもやはりHさんの余裕っぷりは健在で、いつもなら、こういう場所で若い子の姿を見るだけで、「こんな若い子ばかりいるところにいるなんて、なんて自分は分不相応な振る舞いに出ているんだ!! こんなことしてちゃいけない!!」とか思ってしまうところが、「Hさんがこんなに悠長にしてるんだから、自分ももっと楽しんでいいのでは……???」と不思議なポジティブシンキング(?)へと誘われていったのだった。

 それも、その感覚は、「この人もダメな人なんだから一緒に堕落しちゃえ!!」という、心の闇の領域から聞こえてくる悪魔の誘いに何となく乗ってしまいそうになる、といったネガティブな感覚ではないのだ。どちらかというと、なんとなくほのぼのとしてくる、そんな感覚なのである。

 そのようにして僕は年末をカラオケで楽しんだ。カラオケに恐怖感を持っている僕としては異例の出来事だったと言えよう。Hさんに感謝する!!