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本当のことなのだが、異常にわざとらしい聞き間違えをしてくる店員がいたのだ。
「マグカップ」というコーヒーの注文形態を、「マッシュアップ」と聞き返してきたのである。
おれは、「は?」と聞き返してしまいそうになった。しかし、グッと堪え、大人の余裕を漂わせつつ、「あ、マグカップで」と言い直した。
ところがである。この店員の凄いところはここからだ。全く悪びれず、「あ、マグカップ(へえ)」と言って、レジに打ち直している。ちょっと待ってくれ。なんでそんな悪意に満ちた聞き違えしといて、すみません、の一言もないの?
その店員の中では、おれは「マッシュアップ」と言ったことになって終わっているのだろうか?
おれはそんな若者言葉を使おうとやっきになっている三十過ぎのおっさんではない。喫茶店でマッシュアップを発動するようなおっさんではない、はずなのだが……。

そこまで自信満々にレジに向かわれると、なんだか本当に「マッシュアップ」と言ってしまったような気になるから不思議である。これからは「マグカップ」のことを「マッシュアップ」と言う「おっさん」キャラを定着させていこうかな……、と検討する三十一歳独身アパート暮らしなのであった。