おっさんとカラオケ

 おっさんとカラオケに行ってきた。

 こう書くといかにもゆるい空気が漂っている。

 僕より8歳も年上の方とカラオケを同席するのだから、当然気を引き締めなくてはならない。もっと深刻にならなくてはならないのだ。

 おっさんは約束通りの時刻に現れた。僕の方が遅れてしまったくらいである。やはり年上の方の律儀なところには学ぶところがある。

 いつもとは違うラフな雰囲気が漂っているこの方の印象に僕はたじろいでしまった。完全に出遅れた感がある。この遅れはカラオケで取り戻そう、そう思っていた矢先、またしても出鼻を挫かれる。

 すぐにカラオケに直行するものかと思いきや、完全に余裕を漂わせつつ、なかなか動き出そうとしないこの方。ここは僕がなんとかしなくてはと思いつつ、「ウィンドーショッピングでもしませんか?」と提案してみる。

 すると、しぶしぶ僕についてきてくれるが、すぐに、「僕らがここにいても場違いでしょ。もうカラオケの待合い場所で待ってようか」と言われてしまった……。完全に空気がこの方の流れになってしまっている。出遅れたこの流れは取り戻せるのか……???